猛暑日と私
太陽が大地を焼いている
芝生の上で読書でもしようと思って
六本木ミッドタウンに向かった
それはおしゃれで時間の有り余ったセレブにしかできない行為だから
薄手のカーディガンを羽織っていたのだけれど
ミッドタウンガーデンに着いた頃にはとうに汗だくで
読書どころではなかった
それでも私はセレブになりたくって
芝生の上に腰を下ろし、Kindleを優雅に取り出した
普通の紙の本なら眩しくってとても読めやしない
だけど、私のKindleならそれができた
Kindleの画面は太陽の中でも鮮明に黒色の活字を映し出していた
だけれど、やはり暑くってとても読めたものではなかった
5分もしないうちに顔を上げると
芝生の上でひとりなのは私だけだと気づいた
少し恥ずかしくなって
奥にある檜町公園に向かった
遊具で遊びながら読書をする様は
きっと素敵だろうと思えた
だけどそこには何人もの子供たちがいた
それは本物のセレブの子供たちで
彼らはみな英語で白人の子供と喋り
日本語で母親と喋っていた
私は遊具に触れることすら叶わなかった
不平等だと思った
私だって港区民なのに
高い住民税を払っているのに
悔しくなってミッドタウンの建物の中に入ったけれど
どれもこれもが高くって
私に買えそうな品物はひとつもなかった
数人で固まって五月蝿く喋る中国人の買い物客は
大量の買い物袋をもって建物内を闊歩していた
私にはKindleしかなかった
とても哀しくなって
深い大江戸線の中に潜っていった
何組もの笑顔のカップルたちと
途中のエスカレータですれ違ったが
私はあいかわらずひとりだった